small__5973938226僕が大学生の頃に受け持って、今でも強く印象に残っている生徒がいます。仮にKくんとしましょう。何がそんなに印象に残っているかというと、彼の「変化」です。これまでにも色んな生徒の変化・成長を見てきましたが、彼は他のどの子たちとも別でした。今日はそのお話をします。きっと勇気をもらえると思います。

 
 
|部屋から出られない
ある日、家庭教師派遣会社に登録していた僕のところに、一件の依頼が来ました。その時は「高校2年生の男の子」という情報しか知りませんでしたが、指導初日に営業の方といっしょに生徒宅へ向かう車中で、「実は担当する生徒さんは、不登校なんです。」と聞かされました。「まあ、詳しい話は実際に親御さんに会ってしましょう。」少しだけ不安な思いも抱きながら、彼の家へ向かいました。

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僕の地元はまあまあの田舎ですが、その生徒の家の周りもなかなかで、田んぼに囲まれた古き良きといった感じの一軒家にお邪魔しました。お母さんが出迎えてくれ、居間に通される僕と営業さん。ただ一つおかしいのは、当の生徒がどこにもおらず、10分ほど待っても一向に姿を現しませんでした。
 
彼のお母さんはとても優しく、落ち着いた雰囲気の方でしたが、「先生方が来る前は大丈夫と言っていたんですけど…やっぱり無理みたいですね。今日はすみませんでした。」と、残念そうに言われました。しかし、こちらに期待して依頼を頂いている手前、そのまま帰ることはどうしてもできず、「あともう少しだけ待たせてください。それでダメだったら今日は失礼します。」とお願いしました。
 
そこから15分ほど経ちましたが、やはり生徒は現れませんでした。
 
「残念だけど、今日のところは帰るしかないか」と、その場を後にしかけた時です。上の方から、静かにガラガラと引き戸を開ける音がし、ついに2階からゆっくりと、階段を一つ一つ踏みしめるようにして、彼が降りてきました。それが僕とKくんとの出会いでした。
 
身長は180センチはあろうというほど高く驚きましたが、顔にはまん丸の眼鏡をかけていて、その大きな体には不釣り合いなほどにおとなしく純粋そうな男の子でした。「はじめまして。よろしくお願いします。」礼儀もきちんとしているし、とても素直そうな子だな、というのが彼への第一印象でした。
 

ただ、僕らを前にしてオドオドと瞳が泳いでいるのはすぐに分かりましたので、勇気を振り絞って出て来てくれたんだな、と思いました。

 

 
|「勉強はしたくない。」
部屋に二人っきりになり、自己紹介などを済ませたあと、「じゃ、今日はなんの勉強をしようか。」と話を切り出しましたが、Kくんは「勉強は嫌です。やりたくないです。」と返してきました。実は事前にお母さんからも「とにかくまずは話し相手になってあげてください。」と言われていましたが、この真面目そうな性格からして、勉強をしたくない、とハッキリ言ってくるのは意外な感じもしました。また、少しのやり取りだけでも、他人に対して心を閉ざしているな、というのがよく分かり、なんとか距離を縮めたいと思いました。

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そこで色々と雑談をするも、緊張のせいかなかなか盛り上がらず、僕が質問をしても沈黙が続くような状況になってしまいましたが、そんな中、彼がやっとのことで口を開きこう言いました。「先生、あの、ゲームやりませんか?」
 
彼はテレビ脇のゲーム機を指差しました。「家庭教師で来ているのに、ゲームなんてしていいのだろうか」そう思い、僕は少し戸惑いました。
 
恐る恐る尋ねてきた彼の申し出を断るわけにもいかず、いや、ひょっとしてこれは距離を縮めるチャンスではないかと思い、お母さんに事情を説明したところ、「もちろん、ぜひやってあげてください。しばらく誰ともゲームなんてしていないので、きっと喜ぶと思います。」とのことでしたので、初日はいっしょにゲームをして終わりました。 
 
ちなみにゲームは大盛り上がりで、格闘ゲームだったと思いますが、Kくんはとても楽しそうでした。お母さんも「先生、今日はありがとうございました。これからもぜひ息子の相手をしてあげてください。」と喜んでみえました。Kくんとの距離も少し縮まったような気がして、次はなんとか勉強をやってもらうことができるだろう、とその時の僕は期待していました。

長くなってしまいましたので、次回に続きます。

 

◆家庭教師指導について(9/23)

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