small__2589723846Kくんの話、今回で最後になります。実際語り出したら数時間はかかりそうなものを、一つの記事にまとめようとしたら、結局無理で3回になってしまいました。さて、不登校、高校中退からついに立ち直って、努力の末高校卒業資格認定試験に合格したKくんでしたが、それで終わりではありませんでした。



|大学に行きたい
自分の役目も終わりかと、嬉しくもやはり寂しい気持ちでいた僕に向かって、Kくんは言いました。
 
「先生ありがとうございました。でも、実はもう一つ目標があります。僕、大学に行きたいんです。」
 
驚いた僕は彼に尋ねました。「大学!すごくいいと思う。でも、どこの大学に行きたいの?」少し照れたようにして、彼が答えた大学名は、当時僕が通っていた大学でした。僕がしきりに大学の話をしていたことが何かのきっかけになったのかもしれません。とにかく、彼の中で絶対にここに行きたい!という気持ちは揺るぎなかったようでした。
 
ただ僕は彼に、絶対行けるよ!がんばろう!と励ますだけではいけないと思いました。現実もしっかり見た上で、努力するなら全力で努力してもらわなければ、せっかくつかんだチャンスを逃すことになってしまうかもしれない、と。正直に今の実力では簡単には入れないことを伝え、「宿題もたくさん出すし、今までより更にきびしくやることになるけど、それでもいい?」と尋ねました。
 
彼はこう答えました。「はい、お願いします。」その目には全く迷いがなく、まっすぐ僕の方を見ていました。1年前に出会った、緊張で目が泳いでいたKくんとは別人のようでした。 

 
 
|決意の理由
その後Kくんに聞いた話ですが、学校に行かずにほとんど家の中から出ない生活というのは、本当につらかったそうです。同学年は学校へ行っている、友人たちは大学へも進学した(Kくんは不登校期間が1年あったため、周りより1年遅れていました)。自分は一体何をしているんだろう、というみじめな気持ちになったそうです。

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自分がずっと乗っていたレールから、外れたくないのに外れてしまった人の気持ちは、きっとなってみないとわからないと思いますが、当てもない暗がりの中にいるような、まさに人生の「どん底」だったのだろう、と想像はつきます。
 
どん底だったかもしれないけれど、一年がんばって、ついに高卒の資格を手に入れて、チャンスをつかめた。彼は「先生のおかげです。」としきりに言ってくれましたが、チャンスをつかんだのは外ならぬKくん自身の力だと僕は思っています。
 
このチャンスをものにして、もう一度やり直させてあげたい。やり直せることを周りにも証明してほしい。と思い、何が何でも合格させてみせる、と誓いました。 

 
 
|乗り越える力
さて、一年後、どうなったでしょうか。
 
一年間の血のにじむような努力の末、彼は見事、一発で希望の大学・学科に合格しました。こうやって書いていても、まだ信じられない気すらします。不登校で勉強の意欲もなくし、自暴自棄になっていた彼が、高卒の資格を取り、たった一年間で今度は大学にまで合格する。僕も、きっとKくん自身も、出会った頃には想像すらしていなかったことです。
 
彼は自分自身の力で、本当に夢を叶えたんです。僕は、合格をつかんだ彼の堂々とした姿を見て、心の底から晴れ晴れとした気持ちになりました。ご両親もKくんも何度も僕に「ありがとう」と言ってくれましたが、ありがとうと言いたいのはこちらの方でした。
 
僕は彼の努力、変化・成長を間近で見たことで感動を覚え、「こんなにやりがいのある仕事はない」と、教える仕事を生涯の仕事に選びました。その意味でも、Kくんには本当に感謝していますし、あれから10年近く経った今でも、彼のことを忘れることは決してありません。

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もし今が全然ダメでも、やり直すことはできます。何度も何度も失敗したとしても、絶対に無理だと気持ちが折れてしまうような逆境の中に立たされていたとしても、それで終わりじゃないんです。ゼロであってもマイナスであっても、そこから困難を乗り越えることはできます。そのことをKくんは僕に教えてくれました。それを今度は僕が、周りの人に伝えていきたいと思っています。
 

オーストラリアでとてもお世話になった方に、独立にあたって、「勉強だけではない、受験英語だけではない何かをぜひ生徒さんに教えてあげてほしい」と言われました。僕が生徒に教えてあげたいのはつまりこういうことです。どんな壁だって、必ず乗り越えられるんだということ。

例えどこからだって、何だってできるんです。



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